
──棚主が主役の本屋・青い小窓インタビュー
◯それでは青い小窓のインタビューを始めます。よろしくお願いします。開店してからどのぐらいですか?
1年3ヶ月です。
◯今、本屋って斜陽産業と言われることが多いですよね。新しく本屋を始めて、1年以上続くお店って、どれくらいの割合か把握されていたりしますか?
全然してません(笑)。確かに本屋が潰れる話はよく聞きますけど、調べてみると新しいお店もちゃんとできていて。斜陽産業だからこそ、青い小窓が盛り立てよう、という感じですね。あとはイベントに力を入れているお店なので、日々の運営に精一杯という側面もあります。だから1年以上続けられているというのは、本当にありがたいなと思っています。
◯青い小窓は、一般的な本屋とは違って「イベント」を重視していますよね。開業当初からその構想はあったのでしょうか? それとも、やりながら増えていったのでしょうか。
私はまったく違う業界にいた人間なので、最初から「普通の本屋」で勝負するのは厳しいだろうと考えていました。なので、イベントをメインにするという方針は、共同店主の山城さんと話し合って、最初から決めていました。やっていくうちに、青い小窓のコンセプトである「チャレンジしたい人の背中を押す」という言葉が、どんどん明確になってきて。最終的に「10年で500の企画を実現する」という目標を掲げるようになりました。後から数を決めた、ということですね。
◯棚貸しの本屋だと、いろんなジャンルの本が並びますよね。お店のコンセプトに合わない本が出てくることはありませんか? その場合、どう向き合っているのでしょうか。
正直に言うと、どんな本かはあまり関係ないと思っています。本を売ること自体が、ひとつのチャレンジなんですよね。ネガティブなテーマの本であっても、「出してみる」「売ってみる」という行為そのものが挑戦なので、方向性がズレたと感じたことはないです。青い小窓は「チャレンジしたい人の背中を押す」場所ですが、同時に「今はあまりチャレンジしたくない」という人を無理に引っ張る場所でもないと思っていて。その人が今、何を求めているのか。今、どういう心理状態なのか。それを大切にしたいなと、意識しています。できてるかは別ですけどね(笑)。
◯単に本を売る場所というより、棚主さんの挑戦に寄り添い、一緒に歩むようなイメージでしょうか?
はい。それも、だんだんやっていくうちに、そうなってきた感じです。「今は頑張りたくない」という気持ちの奥には、何か理由があると思うんです。そこを無視して進めてしまうと、形だけのチャレンジになってしまう。だから「今、この人は人生で何をしたいんだろう?」というところを、聞くようにはしています。
◯棚主さんと接する時、プライベートな話も含めて、しっかり話を聞くことを心がけている?
はい。そこに関しては山城さんが店主として先輩なので、相談することが多いですね。
◯今までやってきたイベントの中で、正直これは賭けだった、という企画はありますか?
実は、賭けだと思った企画はないです。賭けにならないように、事前に棚主さんと相談して、準備して、内容を練ってからやるようにしています。イベントも、「目的と誰にどんな影響があるのか」をできるだけはっきりさせてから実施する。完璧かと言われると、私自身まだまだですが、意識はしています。
◯これまでで、特に好評だったイベントはありますか?
好評だったのは「本屋を開くためのトークショー」ですね。本屋になりたい大学生の棚主さんを応援したい、という気持ちがひとつになったイベントでした。人数もそうですし、会場の熱量も、一番高かったと思います。
◯継続しているイベントはありますか?
「杉並愛を語る会」です。『地球の歩き方・杉並区版』が発売された流れで、フジテレビに出演させてもらったことがきっかけでした。進行を務めた棚主さんが注目され、青い小窓自体も取材していただいて。これからも続けていきたいイベントですね。
◯フジテレビ「サン!シャイン」で青い小窓も紹介されましたが、影響はありましたか?
店を知ってくれる人は増えましたね。来店者数や売上も、少しずつですが良くなっています。天文図舘みたいに爆発的、という感じではまだないです。でも「天文より上にいくんだ」と思ってないと、私みたいなタイプは怠けてしまうので(笑)。まだまだ上を目指します。
◯棚主さんの本が売れても、それが直接お店の売上にならない。このビジネスモデルの難しさは感じますか?
始めてみて、やっぱりそこは難しいなと思いました。
ただ、本の売上は100%棚主さんにお渡ししているので、計算はすごくシンプルです。一番難しいのは、棚主さんを増やし、コミュニティを大きくしていくこと。棚主さんに満足してもらって、継続してもらう。そこは、日々試行錯誤ですね。
◯お客さんがいない時間、孤独を感じることはありますか?
オープン当初はありました。でも今は、やることが増えてきて。次のイベントのこと、新聞の内容、連絡しなきゃいけない人‥‥孤独を感じる暇がない、というのが正直なところです。1人の時間にも、やることがある状態って、ありがたいですね。
◯この場所から生まれた印象的なつながりはありますか?
バンドをやりたい、っていうつながりが生まれていました。知らない間に、そういう関係ができているのを見ると、やっぱり嬉しいですね。
◯店の名前の由来を教えてください。
2つあります。ひとつは、山城さんが小学生時代に見た沖縄の心象風景。白い砂浜と、海を眺めるカフェの「小窓」というイメージです。もうひとつは、「棚=窓」から、世界へ飛び出していってほしい、という想い。チャレンジの場所としての意味ですね。
◯「日本一、棚主が主役」という目標は、どうなったら達成だと考えていますか?
10年で500の企画を、棚主と一緒に実現することです。ただ、1年やってみて、10年もいらないな、と思いました。
◯現在までに開催した企画数は?
138です。皆で内装を作る、といった小さなことも含めてですが。
◯もし明日、青い小窓がなくなったら、この街から何が失われると思いますか?
チャレンジ精神ですね。どんなに小さくても、世の中って影響し合って成り立っていると思うんです。バタフライエフェクトはたぶんあると思っていて。阿佐ヶ谷の小さな店がひとつなくなることで、最終的には地球全体の明るさが、ほんの少し失われる。本気で、そう思っています。
さらに言うと原動力は「愛」。チャレンジ精神の土台にあるのは、愛だと思っています。「あなたなら大丈夫」と背中を押してもらえること。「それは違うよ」とちゃんと向き合ってもらえること。人が成長するには、そういう関わりが必要で。
私の基本精神は「いいじゃん、やってみよう」、そして「やりながら修正すればいい」という軽いノリです。だから、私が最初に「それはやめよう」と言う時は、本当にダメな時です(笑)。繰り返しになりますが、この店を続けている原動力は、最終的には愛。それがないと、仕事も人間関係も発展しないと思っています。
◯最後にどんな人が棚主に向いてるでしょうか?
ここで出会う、すべての人ですね。強いて言うなら、
女性が強い時代なので、我こそは、という気骨のある男性でしょうか。私は女性には優しくなりがちで、男性には少し厳しいかもしれません(笑)。でも、それだけ底力があると思っているので。もちろん、女性のパワーも本当にすごいですけどね。お店に入った人が、「自分もここで棚主になりたい」、そう思えるような場所を、朗らかに続けていきたいです。
